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白色

 包むように暖かい。

 25日――世間一般で言うクリスマスの日に、花音はそんなことお構いなしと寮の自室にいた。
 運動会やら文化祭やら、何かの行事をさぼりがちな花音は今日も例によって人が多いところには行こうとしない。外を見れば仲のよさそうな男女が並んで歩いているのがよく見える。しかし、空は曇り始めて、今にも崩れそうな天気だった。雨か、雪か。…雪なら、良い。寒いのは好きではないけど、きっと雪の方が皆嬉しいだろうから。部屋に掛けてある黒い誰かのコートに目線をやってからそんなことを考えて、ゆるゆると、眠るように目を伏せた。

 ――ぴんぽーん

 誰か来た。
「……どなた?」
「メリークリスマス、花音!」
 扉を開けると、ずずいっと目の前に紙袋が出された。花音は一瞬きょとんとして、それからこの事態を頭の中で整理するために瞬きを3回した。ぱちぱち、ぱちり。どうしたのと聞いたけれど、それは自分でも吃驚するくらい困惑したような声だった。袋を持ってきた少年――のような少女、一人はにっこりと眩しいくらいの笑顔で口を開く。
「プレゼント!花音いつも寒そうなところにいるから、風邪ひかないようにと思ってさ」
 気に入るといいんだけど、と付け足してもう一度紙袋を前に出した。
「……え、あ、」
 突然のことに言葉を無くして、小さい子みたいに「あ」や「う」しか出てこない。とりあえず差し出された袋を受け取って、ぺこりと頭を下げた。自分の長い髪がべたーっと地面についたのが視界に入る。
 開けていいかと聞くと、こくりと一人は頷いた。なんだろう、と袋を開けて、中に入っていたものを広げる。――真っ白なコート。
「………、…わあ」
 思わず驚きの声が漏れる。白くて暖かそうな、それ。
「気に入らなかったか?」
 首をかしげた一人に向かって花音はふるふると首を振る。ありがとうと呟くと、どーいたしましてと笑った。本当に、眩しい人。
 いそいそと白いコートに袖を通す。真新しい白さを嬉しそうに見つめて、それから視線を一人の方へやった。彼女はもう一度笑って、似合ってると頷く。それがなぜか気恥ずかしくて、ふふ、と思わず花音の口から笑いが零れた。

( あたたかいのは、コートだけじゃなくて )

小話 | 21:10 | comments(0) | trackbacks(0) |

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